ストレスと病気
 私たちの心と身体は密接に関係しあいながら互いに機能しています。身体が風邪を引くとこころも多少なりと影響を受け、心に重いストレスがかかっている状態では身体にも影響が起こる場合があります。ではどのように関係しているのでしょうか。自分の体に気持ちを向けて、ちょっと 想像してみてください。森林浴を楽しむため山に登ります。歩いていると目の前に大きな熊(ストレッサー)が出てきました。あなたは熊に驚いてまずどうすればいいか瞬時に方法を考えます。熊が襲ってくるかもしれないので対応するため体も逃げるか戦うかの緊急反応(fight-flight response)体制に入ります。心拍数が増え血圧が上がります。呼吸は浅く早くなり、必要な血液や酸素を体全体に供給します。肩から腕、大腿部などの筋肉はぐっと力が入りすぐに逃げる、または戦う状態にします。筋肉に力が入り血管が収縮することで指先や足先などの血流を少なくし必要とされる個所に多く血液が行くようにします。このため手先や足先は冷たくなります。また手のひらや足のうらに汗が出ることで戦うときに武器や足が滑りにくくなります。瞳孔は散大し相手をよく見て状況を把握しようとします。胃や腸など消化に沢山の血液が必要とされ働きを抑制します。私たちの体は熊を見たとたん瞬時に準備ができます。
しかし、熊がその場を去ってしまうと私たちの体はまたもとの状態に戻ります。このように私たちの心が緊張したりリラックスしたりすると体もその状態に合わせ緊張したり、リラックスしたりします。この外的ストレスを心から体に伝えて緊急反応体制にする働きを担うのが自律神経と呼ばれる神経です。

自律神経とは

私たちの身体には大きく分けて2つの神経があります。一つは、脳が命令して私たちの意思で動かすことのできる中枢神経(例:手足を動かすなど)で、外部環境への適応を行い、脳から命令を受け私たちの意思とは関係なく、環境の変化や刺激に応じて体内の環境を自動的に調整する自律神経(例:心臓や呼吸器のような各器官の働きをコントロールしている神経)は内部環境への調和活動を行います。

この自律神経は、脳と身体をつなぐ、まさにメッセンジャーの役割を担い、身体全体に網目のようにはりめぐらせています。外界からの刺激を受けると脳に伝え、脳が身体にどのような反応をするべきか、自律神経を介して全身の各臓器や器官に命令します。  血管、腺、内臓、循環器、消化器、呼吸、代謝といった生命活動に必要な働きをすべて調整しています。例えば、食事をすると唾液や胃液などの消化液が出て食べ物を消化させたり、体温を一定に保つために汗をかいたり鳥肌を立てたり等、様々な刺激に対応しながら身体をコントロールする働きをします。

この自律神経は、交感神経と副交感神経と呼ばれる2つの全く異なった働きからなっています。一方がある機能を抑制すれば、他方はその機能を促進する方向に働きます。 この2つの神経は、お互いに相反する働きで私たちに刻々と降りかかってくるさまざまな外界の刺激争や恐怖などの緊急時に活動する緊張型の神経系で、副交感神経はストレッサーによって上がった交感神経のシーソーを正常な状態に戻す休息型の神経系です。いずれも生命を維持する上では欠かせない役割を演じています。

交感神経の働き
交感神経は恐怖や不安などのストレッサーに対応するため体を緊張状態にさせる役割があります。身体反応としては下記の表にあるように①交感神経が優位になると血圧が上昇し、心拍出量が増加し脳、筋肉の血行がよくなり皮膚や内臓器官にいく血管は強く収縮する②瞳孔は散大し唾液分泌量は減少し、鳥肌が立ち手掌や足の裏に発汗現象がみられる③血液成分のうち、血糖、遊離脂肪酸が増加し赤血球が増加し血液の凝固時間が短縮する④胃の蠕動は停止し、消化管の分泌も減少する⑤情動に伴い血漿アドレナリン、ノルアドレナリンも遊離脂肪酸と同様に上昇をしめす等の反応が起こります。

副交感神経の働き
副交感神経はエネルギーの保存、休息、回復に向かい平常な状態に戻す役割があります。副交感神経が優位になると下記の表にあるように①瞳孔は縮小し、心拍数は減少し心収縮力の現象も見られる②緊張した筋肉が弛緩し元に戻るため皮膚抹消血管は拡張し温かい血液が指先まで流れる手や足先が温かくなる③血圧が下がる④気管支は収縮し消化器系の動きが増大する⑤汗腺や唾液腺も分泌活動が促進されるなど身体の働きも元の状態に戻す働きがあります。

交感神経と副交感神経の働き
交感神経の働き 部 位 副交感神経の働き
心拍数増加 心臓 心拍数現象
拡張 気管支 収縮
抑制 胃の働き 促進
上昇 血圧 下降
収縮(手足冷感) 抹消血管 元に戻す
開く 瞳孔 収縮
分泌(粘液性) 唾液 分泌(さらさら)
分泌 汗腺

ストレスと病気
適度なストレスは、心と身体を活発にし、仕事などの生きるためのの意欲を高めるといわれています。しかしストレスが大きすぎたり、ストレスがかかった状態が長く続くと交感神経が優位なままの状態が続き身体や心の一番弱い部分にストレス信号として現れます。
肩がこる、頭が痛い、胃がもたれる、眠れない、朝早く目が覚めてしまう、イライラする、手足が冷たい、下痢便秘が続く、手に汗をかく、動悸がする、風邪をひく、食欲があまりないまたは過食等のストレスサインがともります。この段階で自分のストレスに気づき、副交感神経を優位にする休憩や休養などのリラクセーションの時間を取り入れて、ゆっくり休むといいのですがこのサインにも気づかず頑張りすぎると心も身体も疲弊しいろいろな症状が現れ多くの病気とつながっていきます。

ストレスによる病気
心身症
ストレスが蓄積してくることにより交感神経の働きが優位なままの状態が続き、身体が疲弊してくると様々な身体の症状が出現します。ストレス因子が密接に関与して器質的ないし機能的障害が認められる状態を心身症といいます。

心身症は身体のいろいろな部分に現れます。
①呼吸器系   気管支喘息・過換気症候群
②循環器系   高血圧症・狭心症・心筋梗塞
③消化器系   慢性胃炎・胃十二指腸潰瘍・過敏性腸症候群
④内分泌代謝系   単純性肥満
⑤皮膚科領域   慢性じんましん・円形脱毛症・アトピー性皮膚炎
⑥整形外科領域  腰痛症・肩凝り症
⑦婦人科領域    更年期障害・自律神経失調症