一般的にリラックス法として普及しているものの一つに、1932年ドイツの精神医学者ハインリッヒ シュルツにより創始された「自律訓練法」があります。この自律訓練法のルーツは1890年頃、フォクト(Vogt,O)が催眠の研究をおこなう中で、何度も催眠状態に入った人は催眠に入る前よりも疲労が回復し、心身の緊張が緩み、気分が安らぎ、以前にも増して心身ともに健康になる結果が明らかになることに気づきました。そこで催眠に入るときにどのような状態なのかと研究を進めうちに催眠に必須の心理生理的条件として心身の弛緩であることが解り、それが手足の重感、温感であるということがわかりました。フォクトについて研究をおこなっていたシュルツは、身体の調子がよくなる催眠状態の特徴について調べ、この心身の弛緩状態を催眠のように他者誘導ではなく、自己催眠で行うほうが予防的、治療的効果が高いことがわかりました。そこでシュルツはこの考えを展開させ自己暗示によってリラックスした状態を作り出せるような方法「自律訓練法」を考案しました。
自律訓練法
自律とは・・・自分で自分自身をコントロールすること(セルフコントロール)
訓練とは・・・練習の積み重ねによって効果が得られること
法とは・・・客観的、体系的、科学的な方法であること
体の特徴とは
・手足の力が抜けて重たいような、心地よく、だるいような感じがする
・手足の皮膚温があがり、温かい感じがする
・呼吸や脈拍がゆっくりになる
などです。
このような状態を作り出すために「重たい」「温かい」などの自己暗示を訓練し、短時間に心身のリラックスや自律神経のバランスの調整をはかります。
昔は心と身体はつながっていないと思われていましたが、自律神経の働きをからもわかるように心が緊張すると体が緊張し、体が緊張すると心の緊張します。心と身体は密接につながっているのです。この関係を利用してリラクセーション法が考えられています。
体をリラックスすることで心がリラックスし、心がリラックスすることで体がリラックスします。そこで体を自分の意志でリラックスさせることで心をリラックスさせるという方法です。
姿勢
出来るだけ楽で体の力が抜けやすく安定感のある姿勢にします。足は軽く開き、目と口は軽く閉じます。
身体の各部分の力が抜けていることを確かめます。気持ちを落ち着かせるために、深呼吸をするのもよいでしょう。
※自分のやりやすい姿勢でよいのですが、時と場所に応じてどの姿勢でも出来る方が望ましい
1)「気持ちが落ち着いている」と3~4回、声に出さずに心の中で繰り返しいいます。
※この時リラックスする風景を頭の中で思い浮かべながら公式を頭の中で繰り返す
2)「両手両脚が重たい」*①と同じように心の中で繰り返す。
※重たいという感じは力が抜けた時の腕の重たさ(ブランと力を抜いた状態)。重たい物をぶら下げている
という感じではありません。
はじめに利き腕全体にぽんやり注意を向けて「右(左)手が重たい」と繰り返します。
重たい感じが大体つかめるようになったら、利き手→反対の手→利き脚→反対の脚と
進み、慣れてきたら一度に「両手両脚が重たい」を繰り返します。
3)「両手両脚が温かい」*①②と同じく心の中で繰り返す。
重感練習がマスターできたら、同様にして温かさが感じられるまで繰り返します。
※温感がわかりにくい場合はお風呂に入ったときのイメージを思い浮かべてみてください
心の中で暗唱反復しているとき、無理に気持ちを落ち着けようと意識しすぎると、かえって緊張してしまうという矛盾が起きてしまいますので(眠ろう眠ろうとすると眠れないように)、rああ、いっもより幾分気持ちが楽だなあ」と感じられる程度でよいでしょう。積極的に「落ち着かせる」のではなく、「落ち着いているなあ」と受け身の気持ちでぼんやりすることが大切です。
自律訓練法を終了したあとすぐに起き上がると、身体に力が入りにくく、だるさが残ったり頭がぼ一っとして活動しにくくなったりしますので、練習後は必ず毎回消去動作を行って下さい。
1)両手のひらを握ったり、開いたりする動作を数回繰り返す
2)腕の曲げ伸ばし
3)腕と足を軽く叩く
4)大きく全身伸ぴをする
5)深呼吸を2~3回行う
6)ゆっくり目をあける
最後に・・
自律訓練法の重感・温感を習得できるようになれば自然と身体がリラックスできている状態をつかめるようになります。リラックスした身体の状態を知ることでストレスで緊張している自分の状態に気づき、リラックスするタイミングがいつなのか知ることが出来るようになります。リラックスできるようになるには毎日3回朝・昼・晩と自律訓練法を練習してください。個人差はありますが1ヶ月~3ヶ月くらいで習得できます。早く上手になろうと思うと反対にそのことがストレスになり緊張してしまいますので、出来ても出来なくてもどちらでもいい
という気持ちでのんびり根気よく練習しましょう。