per se 研究会

《第1回 per se研究会 発表内容》


「矯正施設被収容者の栄養・健康調査」

 
池川雅哉1)、吉田真規2)、小泉直樹2)、武田隆久3)、今西雅代3)、山下智栄3)、木村美恵子3)

1)京都府立医科大学・分子医科学、2)京都拘置所、
3)タケダライフサイエンスリサーチセンター・疾病予防センター

 

【目的】
 我々は、これまで矯正施設における被収容者の健康栄養状態、糖尿病・高血圧などの生活習慣病治療、給与食糧の検討を行ってきた。日本全国の矯正施設の献立から各栄養素の給与実態について調査し、各種栄養素、ビタミン、ミネラル給与実態は、どの施設においても所要量を上回っているものの施設間で差のあること、ナトリウム給与量は、どの施設も国民推奨量を上回っていること、また施設毎の高血圧罹患率は、ナトリウム給与量と相関があることを報告した。今回は、京都拘置所の被収容者の各種ミネラル栄養状態および血中ビタミンB1濃度について調査し、若干の考察を試みた。

【方法】
 2003年9‐10月の時点で、京都拘置所に入所中で、健康管理上の理由から血液検査を勧め、本人の同意を得られた55名(男49女6)を対象とし、一般生化学検査、血液検査、血液中ビタミンB1濃度、血液中カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、リン、硫黄、鉄、銅、亜鉛、ストロンチウム濃度を測定した。

【結果および考察】
 一般生化学検査、血液学検査から、被収容者は一般健常国民レベルに比べて、貧血(低ヘモグロビン血症)の傾向にあること、低アルブミン血症は、入所1ヶ月以内の被収容者に顕著であり、収容期間が3ヶ月を越えた対照群では、有意に改善状態にあることが明らかとなった。血液中ビタミンB1濃度においても、同様の傾向が認められ、3ヶ月を越えた対照群においても、一般健常国民レベルを下回ることが明らかとなった。血中ミネラル濃度に関しては、被収容者の血清中マグネシウム、リン、鉄濃度の平均値は、一般健常群に比べて低いことが明らかとなった。以上から、矯正施設の被収容者のなかには、入所時にタンパク質・ミネラル・ビタミンなどの潜在的な低栄養状態にある者が存在し、入所中に多少の改善を示すものの、依然として、国民の平均レベルを下回る項目のあることが示唆された。

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