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逆流性食道炎とはどのような病気でしょうか?
症状が長く続くとどうなるのでしょうか?
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胃酸が逆流することによって起こる食道の炎症です。胃の壁細胞からはいろいろな刺激によって塩酸(胃酸)が分泌されます。
胃酸は小腸に食物を送り込む前におおまかな分解をする働きを持つ強い酸で、雑菌を殺す役目も果たしています。酸の逆流の代表的な症状に胸やけがあります。
胸骨の裏側にしゃく熱感を生じる状態です。気をつけなければならないのは、症状の強さと病気の程度が比例しないことです。つまり炎症がひどいのに症状が軽かったり、
日常生活に困るほどの胸やけを訴える人でも炎症は軽微であったり、診断に注意を要します。
炎症が長く続くと食道の狭窄を起こし食物が通りにくくなったり、炎症部分から出血し貧血になるといった合併症を起こすことがあります。
また食道の粘膜は皮膚のように細胞がシート状に重なっている(重層扁平上皮)のですが、慢性的な逆流による炎症により胃の粘膜と同じ状態(バレット食道)になり、
胃や腸に起こると考えられている腺がんが発生するリスクが高まります。日本では全食道がんの90%は重層扁平上皮がんなのですが、
逆流性食道炎が多い欧米では腺がんが50%を占めており、日本でも増加傾向にあることは間違いありません。
治療方法としてはプロトンポンプ・阻害剤(PPI)という酸抑制剤が開発され、食道の炎症については、8週間ほどでほぼ治癒します。食事の欧米化により、
心筋梗塞などは欧米の10〜20年前を追って増加していることから、逆流性食道炎や腺がんも多くなると考えられ、今から対処しておく必要があります。
医仁会武田総合病院 副院長/消化器内科部長
井口 秀人
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