健康栄養インフォメーション


◇◆ ダイエットしても、やせない! ◆◇

考えられる原因 ◆ 肥満遺伝子(?)
 システムエンジニアのOさんは、肥満とコレステロールに悩む中年男性。毎回、ユニークな質問を持ち込む話題が豊富な人である。 「私の病気とは関係ないでしょうが、肥満の遺伝子というのがあるそうですが、どのようなものですか」というのが今回の質問である。
 確かに1994年に米国で遺伝性の肥満マウスから病因遺伝子として肥満遺伝子が同定され、レプチン遺伝子と名づけられた。
 この肥満遺伝子の産物であるレプチンという物質は強力な摂食抑制とエネルギー消費を促し、肥満を抑制する。肥満遺伝子は「肥満になる遺伝子」 であるかのようによく誤解されるが、そうではなくて食欲などを抑制する「飽食遺伝子」とでもいうべきものである。つまり「この遺伝子に障害があると肥満になる」 という意味で一般に肥満遺伝子と称する。
 97年にパキスタン系の一家系で、8歳で体重86キロの肥満女児と2歳で29キロの肥満男児に世界で初めてこの遺伝子の異常が見つかった。 マウスやラットだけでなくヒトでもこの遺伝子が肥満の原因になることがわかった。
 Oさんの質問が続く。「肥満者はみんなこの遺伝子の異常があるのですか」
 じつはこの二人以外には肥満遺伝子の異常は世界でも報告がない。一般に見られる肥満は遺伝子の異常によるものではない。それどころか肥満者の血中のレプチンの値は、 摂食抑制因子への反応性(感受性)が低下しているせいか逆に高いという、じつに複雑な話である。
 この遺伝子やその産物であるレプチンが見つかったとき、夢の抗肥満薬ができると世界中で期待された。事実、 遺伝子操作でこの遺伝子を通常の10倍以上に増加させたマウスでは、摂食量は激減し、体重も減少した。また、実際にこの物質を最新の遺伝子技術でつくり、 肥満の薬としてヒトに投与する臨床試験が米国で行われている。その初期の結果が98年の米国の学会で発表され、平均で約8パーセントの体重減少が見られたという。
 減量が順調でないOさん。「その薬が早くできればいいですね」と思わずため息をついた。



肥満に関係した遺伝要因はほかにもある。たとえばエネルギー消費に関係する遺伝子のタイプによって、 1日当たり200キロカロリーも基礎代謝が異なる。同じ量を食べていても太りやすい人がいるわけだ。やせにくいのは「意志が弱いせい」とは断定できない。
『「痛い」「だるい」は生活習慣病のサイン』 西沢良記 講談社+α新書より

カルテTOPへ


京都市下京区中堂寺南町134 京都リサーチパーク内
健康栄養インフォメーションプロジェクト事務局
ご意見・ご感想は info@health-info.jp までどうぞ

本ホームページの複写・転載・ダウンロードを禁じます