最近の食生活の変化は著しいものがあり、とくに若い人への影響が大きいようだ。
K子さんは27歳の女性。仕事の関係で東京で1人暮らしを始めて3年目を迎えていたが、急きょ転勤で大阪の実家から通勤するように
なった。
もともと健康で病気知らずだったが、職場の健診で血液中のコレステロール値が高いと指摘された。半年ほどコレステロールを下げる
薬を服用していたが、その後中断していたとのこと。やはり心配なのでと来院の理由をいう。
調べてみると血中のコレステロールが1デシリットル当たり305ミリグラムと非常に高い値であったが、転勤する前は320ミリグラム
程度とさらに高かったという。両親や兄弟にとくにコレステロールの高い人もおらず、家族性の高コレステロール血症の特徴である
アキレス腱の肥大も認めなかった。
ところが、薬を服用してもいないのに、転勤して1ヵ月後の検査では272ミリグラムと低下傾向があり、3カ月後には224ミリグラム
まで低下したのである。「不思議ですね」とK子さんは人ごとのようにいう、
1人暮らし時代のK子さんの食生活は、仕事が忙しいことと1人だったこともあって、食事はいつも「コンビニエンスストアの総菜と
卵料理」であったらしい。転勤後は母親と2人暮らしで、主にお母さんが煮物など「ありふれた家庭料理」をつくってくれる食生活に
なった。どうも1人暮らしの食事に問題があったようだ。
卵類はコレステロールが豊富な食品で、1個250ミリグラムも含む。ついで乳製品、肉類、貝類などであるが、「卵は1日2個分
食べていました」というK子さんは、日本人の平均の300〜500ミリグラムの2倍を摂取していたことになるわけだ。これらの食品の偏食は
コレステロールの過剰摂取になって、コレステロールを上昇させうる。
人間のコレステロールは本来、肝臓で合成するのが6割で食事性は4割である。食生活の豊かな現在では食事の影響がもっと大きいの
かもしれない。「私も家庭料理をもっと勉強します」とK子さんは恥ずかしそうにポツリとつぶやいた。
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