健康栄養インフォメーション


◇◆ 深爪がいつまでも治らない ◆◇

考えられる原因 ◆ 糖尿病
 Tさんは66歳。自営業で元気に毎日を過ごしているが、30年来の持病がある。
 32年前、独立することを夢見ながら夢中で働いていた会社勤めの時代に、たまたま会杜の健診で尿糖を指摘され、近所の病院を受診した。肥満と暴飲暴食を注意されたが、 それ以上の指示はなく、その後も時折、口が渇く程度で目立った症状はなかった。
 会杜をやめて独立した仕事が軌道に乗った59歳のとき。右足の2番目の指の深爪が化膿し、なかなか治らないため通院するようになった。このとき血糖が高いため食事療法と 服薬を勧められた。
 やがて、けがをしたわけでもないのに左足背が赤くなり腫れてきた。痛みがないので放置したが、3日目には3センチ大の皮膚潰瘍になったため皮膚科を受診した。 消毒し軟膏を塗ったが治らず、内科へ紹介された後、糖尿病で入院した。
 安静と禁煙、外科処置、点滴と食事療法など、Tさんには大げさすぎると感じられた入院生活だったが、後日、主治医に「じつはもう少し来院が遅れていたら、 ひざ関節での下肢切断を真剣に考えていた」と聞かされてびっくりした。
 糖尿病に伴う足の病気は厄介な合併症だが、日本では最近になりやっと問題視されるようになってきた。
 入院した糖尿病患者の10パーセントの足に病変があるといわれる。末梢神経障害のため患者にはほとんど痛みがない。また動脈硬化が進み血行障害もあって治りにくく、 入院期間を長引かせる第1の原因でもある。
 欧米では、足の病変を専門に扱う看護師や理学療法士がいて、糖尿病患者の爪やたこの手入れをし、糖尿病が足にどんな障害を与え、いかに守るかを教育する。 靴の専門士(ペドルシスト)もいるくらい重視されている。
 日本でも動脈硬化が欧米並みになりつつある。足元を見直すことは、ほかのことだけではなく糖尿病治療にも必要だ。



痛みは危険が迫っているサインだが、糖尿病の場合このサインが働きにくい。入浴時に、 足をきれいに洗いながら傷の有無を目でチェックする習慣をつけよう。
『「痛い」「だるい」は生活習慣病のサイン』 西沢良記 講談社+α新書より

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