糖尿病になって11年目、56歳のB子さんが突然、意を決したような表情で「糖尿病になると骨折しやすくなるというのは本当ですか」と尋ねてこられた。
B子さんは今まで骨折など経験がないが、最近、糖尿病と骨折の関係を耳にして心配になったようだ。
じつは糖尿病ではインスリンの働きが低下したり、高血糖のために骨量が減少したりするというのは以前からよく知られていた。
ただ、学会では種々賛否両論がある。若い人に多い1型糖尿病では骨量減少が生じることは確認されているものの、B子さんのような成人型の2型糖尿病では骨量が減少する
という説と増加するという説がある。
骨折も起こりやすいという意見と大差ないという意見があった。この混乱の原因は、2型糖尿病では肥満者が多いことや、糖尿病では骨代謝が低下するためにかえって骨が減少し
にくくなるといった複雑で医学的な要因があるためである。
最近の米国の研究によると、65歳以上の637人の糖尿病の女性と974人の糖尿病ではない女性を約10年間観察して骨折の頻度を調べたところ、糖尿病患者では大腿骨頸部骨折と
上腕骨骨折が多いことがわかった。生活活動能力などの差はなく、たとえ骨量が減少していなくとも糖尿病では骨折しやすいことを示したことで世界の注目を浴びている。
閉経5年目のB子さんの場合、骨を守る女性ホルモンが途絶え、骨量減少が起こりやすい年代であるのでとくに注意がいる。
「糖尿病は骨粗しょう症になりやすいのは本当だったのですね。もっと糖尿病の治療をしっかりしなければ」とB子さんは語っていた。
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