ある医院で骨粗しょう症と診断された五五歳の女性、Wさんはホルモン補充療法を勧められ、セカンドオピニオンを求めてやって来た。
卵巣の卵子は出生時に200万個あるが、しだいに減って思春期には40万個となる。40歳ごろから急激に減少し、50歳前後で卵巣機能は衰退し閉経となる。
ホルモン補充療法は女性ホルモンのエストロゲン製剤を投与し、卵巣機能を回復させて維持する治療法だ。
ところが、女性ホルモンの服用により消退出血、乳房の張りや肝機能障害が見られることがある。もっと問題になるのは子宮がんや乳がんだ。
子宮がんは併用薬でほぼ安全に予防できるが、乳がんは発症頻度がかなり低いとはいえ十分な解決策はなく、治療しながら半年に一度検診する必要がある。
血栓性静脈炎なども起こりうる。このようにいうと大変怖いように思えるだろう。
ホルモン補充療法は従来から閉経後の顔面紅潮や冷や汗、睡眠障害など、種々の更年期障害に対する治療法として主に婦人科で広く実施されてきた比較的歴史のある治療法だ。
最近では骨粗しょう症の治療に用いられ、注目を浴びている。この治療により閉経後骨粗しょう症の女性で骨量が著しく増加し、椎骨骨折の予防効果も確認されている。
欧米では骨粗しょう症薬として第一に選択するものとなっている。
この治療法を選ぶかどうかとなると、乳がんや子宮がん、血栓性静脈炎などの絶対禁忌を除き、半年ごとの婦人科検診を前提にすればとても有用な治療法であることは問違いない。
ホルモン補充療法をひと通り説明すると、Wさんは骨粗しょう症の治療法として試してみたいと決断されたようだ。
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