Aさんは46歳の女性で、健康だったため病院に行ったことがなかったが、階段を昇っているときに急にふらつき数秒間、失神状態になった。
驚いて近くの病院を訪ねたところ、高血圧と不整脈といわれ、来院された。このときの最高血圧は196、最低血圧は92と高く、脈拍数は毎分110回と速かった。
頸部にある甲状腺が腫れて、少し目が出ていたため、バセドウ病を疑われた。検査をしたところ、バセドウ病と確認された。
バセドウ病はドイツ学派の病名で、米国ではグレーブス病といわれる。日本での患者はおよそ1000人に1人とされる。男性1に対し、女性は3〜4と女性に多い。
20〜40歳で発病する人が多い。
この病気は昔から知られているが、正体ははっきりしない。免疫に関係する遺伝子の異常や環境因子により免疫の制御機構が崩れて、
甲状腺ホルモンの分泌を刺激する受容体というたんぱく質に対して抗体が生じ、このホルモンが過剰に分泌される病気と考えられている。
症状としては高血圧、不整脈、発汗、筋力低下、イライラ感などがある。Aさんにも同様の症状が見られ、不整脈とともに一時的に血圧が急上昇して、
脳に送られる血液が不足し、失神したと思われる。
不整脈と脈が速いために心臓が肥大して、心不全状態になることがある。また不整脈のために脳塞栓になり、発作を起こすことも予想される。Aさんは精密検査の結果、
このような病気は否定された。
バセドウ病の治療は、甲状腺ホルモン合成阻害剤の投与、放射性ヨードによる甲状腺細胞の破壊、手術の3つがある。薬の投与が一般的だが、
副作用が生じる場合や効果がない場合は放射性ヨードか手術を行う。
とくに甲状腺が大きく腫れているときは再発しやすい。さらにこの病気を十分に治療しないまま感染したり妊娠したりして強いストレスが加わると、
39度を超える発熱や下痢・嘔吐、意識障害などに陥り、生命の危機をまねく甲状腺クリーゼを起こすおそれもある。
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