糖尿病を治療しているSさんは「同じカロリーなら砂糖でもごはんでも食べれば同じでしょう」と不思議そうな表情でいう。
元教員だった40代のまじめな女性である。彼女の疑問は主治医から砂糖のとりすぎを注意されたことに端を発した。
Sさんはお菓子や果物も控えめにし、唯一の楽しみのコーヒーを1日に4杯で我慢している。彼女の計算では、コーヒー1杯に2個の角砂糖を入れると砂糖は7.4グラム、
約30キロカロリーで、1日4回だと120キロカロリーとなる。ごはん1杯が160キロカロリーだから4分の3杯に相当する。
この分のごはんを食べなければ食事療法のつじつまが合うはずである。ところが主治医は砂糖を減らせという。
砂糖の食品としての特徴は高エネルギーで消化・吸収が非常によいことと甘みがあることである。現代のようなグルメの時代では味覚の機能が優先され、
食品本来の高エネルギー・易吸収の特性が忘れられやすい。
こんな実験がある。総摂取量の16パーセントを砂糖でとる糖尿病患者群を1パーセントしかとらない群と比較すると、同じカロリーを食べていても食後のコレステロールや
血糖が高くなっていたという。これは動脈硬化の危険因子を増やすことを意味している。
ちなみに、わが国での砂糖類の摂取は1日に80グラムと欧米の120グラムよりは少ないもののかなりの量である。砂糖は1グラムで4キロカロリーなので日本人は
320キロカロリーを砂糖でとっていることになる。これは1日の総摂取量の16パーセントに相当する。「それならどれくらいなら理想ですか」とSさん。じつは1日10グラム程度である。
砂糖類そのものを直接に食べなくとも、ケーキ1個かアイスクリーム1個で15グラム、ソフトドリンク1本なら20グラムなので、10グラムは相当に難しい注文だ。
Sさんの場合、コーヒーの砂糖だけで30グラムもとっているので、主治医の注意となった次第だ。10グラムまで減らすのは一般的に難しいとしても、
砂糖の多い問食にはできるだけ頼らないほうがよい。食品の薄味を楽しめるような生活態度が健康的といえそうだ。
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