健康栄養インフォメーション


◇◆ おなかがすくとフラフラする ◆◇

考えられる原因 ◆ インスリノーマ
 Kさんは52歳の公務員。10年前に糖尿病と診断され、薬を飲み始めた。しかし最近では体重が増加するようになり、ときに意識障害を起こすことがある。
 空腹時に足がふらつき、目のかすみを経験したのは1年前。食事をするとすぐに治り、その後は糖尿病の薬を飲まなくてもよくなるようになった。しかし突然意識がなくなり、 気がつくと救急病院に搬送されていた。その後も2度同じような発作に見舞われ、最後の発作ではけいれんが起きたため、医師から精密検査を受けるように注意を受けた。
 Kさんの話をよく聞くと、発作が起きるのは空腹時で、食事や点滴で改善していることがわかった。発作時の血糖値は1デシリットル当たり31ミリグラムと極度に低く、 この発作は低血糖によるものだった。精密検査を受けた結果、膵臓のインスリノーマという小さな腫瘍からインスリンが過剰に分泌され、低血糖を引き起こすことが判明した。 この腫瘍は比較的まれな疾患で、意識障害や全身けいれんなどの発作を起こす。低血糖による発作が長期にわたって何回も起きると健忘症や高度な肥満になることがある。
 血液中の糖が1デシリツトル当たり70ミリグラム以下になると低血糖状態になり、空腹感やあくびなど副交感神経の刺激症状が現れる。さらに同50ミリグラム以下では計算力の 低下や眠気などの症状が起きる。さらに低下すると頻脈や冷や汗、過呼吸などの交感神経の刺激症状も出るようになる。同30ミリグラム以下では昏睡やけいれんなど脳幹機能に 障害を生じ、生命の危険にさらされる。
 インスリノーマは外科的に摘出するのが第一の治療法であり、予後も比較的良好だ。薬でインスリンの分泌を抑える治療法もあるが、病気を根絶するのは難しい。 腫瘍は80パーセントが良性。悪性でたとえほかの臓器に転移していても、転移巣と膵臓の腫瘍を手術すると経過は比較的よいといわれている。
 発作が起こってからはよく食べても糖尿病が悪くならなかったのに、インスリノーマの手術後は以前のように食事制限しなければいけなくなったとKさんは残念がっていた。



血糖は脳にとって唯一のエネルギー源である。血糖値は下がりすぎると脳のエネルギー不足となって意識障害を起こす。 血糖は高くても低くても危険なのだ。
『「痛い」「だるい」は生活習慣病のサイン』 西沢良記 講談社+α新書より

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