知人のW氏が訪ねてきて、夏のゴルフで経験した話をしてくれた。
ゴルフが大好きなW氏はその日もプレーを楽しんでいたが、途中から倦怠感を感じるようになった。W氏はいつも途中でトイレに寄るのだが、この日は全く催さなかった。
おなかの調子がいまひとつだったせいか飲み物もあまり欲しくなかったが、ときどき冷水を飲むように努めたという。
ところが、18番ホールにたどりつくころには頭痛と立ちくらみで、さすがのW氏もプレーどころではなくなったらしい。「それでも根性でホールアウトしたよ」と笑いながら
語る。
じつは、ゴルフの2日前より軽い食あたりのような下痢があったという。
どうやら、無理してゴルフに出向いたのがいけなかったようだ。下痢で食欲もあまりなく脱水傾向であったところへ、盛夏の強い日差しを浴びながらきつい運動で多量の汗を
かき脱水が増幅された。さらに水だけを飲んで電解質を補充しなかったため低張性脱水を生じたと考えろれる。
低張性脱水とは下痢や嘔吐、多量の発汗などの際にミネラルを含まない水分補給によって血液中のナトリウムが減少し、浸透圧低下が生じて循環障害をきたすことだ。
はじめは血圧低下や立ちくらみ、頻脈、全身倦怠感などを生じる。重くなると嘔吐、さらには意識障害をまねく。この脱水ではのどの渇きが生じないのが特徴だ。
軽症では体重1キロ当たり0.5グラムの塩分が失われ、嘔吐など中等度では同0.5〜0.75グラムの減少、重症ではそれ以上が失われることになる。損失分の塩分と水分を補う
ことが大切だ。
「真夏のゴルフは怖いなあ」とW氏、自分の不注意は棚に上げて、ため息をついていた。
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