健康栄養インフォメーション


◇◆ のどの痛みは風邪ではなかった ◆◇

考えられる原因 ◆ 急速進行性糸球体腎炎
 Yさんは63歳の商社役員。風邪をひいたようなのどの痛みと咳があり、近くの病院を受診した。尿検査でたんぱく尿と血尿を指摘されたものの症状は軽く、 内服薬で風邪は改善した。腎機能を調べる血中クレアチニンの検査結果も1デシリツトル当たり1.2ミリグラムと正常域内だった。
 ところが翌月になって、今までに経験がないような疲労感が急に襲った。食が進まず、ときに悪心も感じる。再び同医院を受診して検査したところ、 肝機能や血糖などは正常だが、クレアチニンが2.2ミリグラムと増悪し、やはりたんぱく尿と血尿が認められた。体重の増減はなく、むくみもないが、 このころから尿量が少なくなったようであった。
 主治医の診断は急性腎炎。すぐに入院したが、倦怠感はさらにひどくなるばかり。発熱を伴い、貧血のためか顔面は蒼白でやや暗褐色調を帯び、死相を思わせる状態となった。 主治医の指示でYさんはわれわれの病院へ転送され、腎臓の生検を行った後、ただちに腎不全治療のための透析を開始した。
 生検の結果、腎臓の糸球体が著しく破壊され、強い炎症を起こしていることがわかり「急速進行性糸球体腎炎」と診断された。
 この病気は比較的まれだが、女性より男性に多く、年齢では30歳から60歳に多い。1〜2ヵ月で腎不全状態に陥る致死率の高い病気で、出血性肺炎などを併発する。 原因が不明の自已免疫疾患である。
 Yさんは重い腎不全状態だったが、透析と血漿交換療法を併用して抗体や免疫複合体を取り除き、ステロイドホルモンで免疫を抑える治療によって、病状は劇的に改善した。 透析は続けなければならないが、退院して新年は白宅で迎え、「今年も意欲をもって仕事ができそうです」と語ってくれた。



免疫複合体とは、白分の組織に対してできた抗体が、標的となる抗原と合体してできたもの。これが腎臓にくっつくと炎症を広げる もとになる。血液を特殊な器機に通し、この免疫複合体や抗体を除去した血液を再び体内に戻すのが血漿交換療法だ。自已免疫疾患などへの切り札になる治療法である。
『「痛い」「だるい」は生活習慣病のサイン』 西沢良記 講談社+α新書より

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