54歳の女性のIさんがひざの関節痛で相談に来た。152センチで82キロと、かなりの肥満体。半年ほど前から関節が腫れたようになり、
立ち上がるときに痛む。屈伸すると擦れるような音もするという。
エックス線写真を見ると関節のすき間が狭くなり骨の縁にとげのようなとがった骨ができていた。磁気共鳴画像診断装置(MRI)で調べたら、関節軟骨の小さな欠損や関節液の
わずかな貯留があり、変形性関節症と診断した。
年をとると、関節軟骨や骨に破壊が起こる。それを補おうと骨が部分的に増殖し関節が変形する。体を動かすことで変形した関節にはいろいろな力が加わるので、
さらに変形が進み悪化する。
患者は40歳以上に多く、45〜64歳で30パーセント、65歳以上では68パーセントという報告がある。女性は男性の約2倍である。肥満体の人に多く、肥満が危険因子とされる。
生体力学の解析では、平地歩行でひざ関節にかかる最大負荷は体重の3倍、階段の昇降で5〜7倍になるという。Iさんが標準体重の51キロだったら約30キロも負荷が減る
ことになる。つまり、歩くときの関節への負担は約90キロ減り、階段の昇降ではじつに150〜210キロの軽減になる。
治療には痛み止めに非ステロイド消炎剤を用いる。痛みがひどければヒアルロン酸を注射する。関節を支える用具を使う治療や人工関節置換術なども生活に支障をきたす
場合には行われるが、ひざ関節を守る大腿四頭筋の強化が大切だ。
自転車に乗ると体はサドルで支えられるので負荷は小さい。自転車こぎはお勧めの予防運動だ。水泳も有効だ。
「やっぱり減量が大切なのですね」とIさんはため息混じりにつぶやいた。
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