Kさんは55歳。広告代理店に勤める中堅サラリーマン。いたって元気で、これまで医者にかかったこともなかった。
ある年5月に左ひざ関節に腫れと痛みがあり、6月には歩行が苦痛となって整形外科を受診した。関節液を抜くなどの治療を受け、やや改善した。その後、
左ひじに関節痛と腫れが現れ、7月に右ひざ関節痛、左手関節痛が続き、9月には微熱、食欲低下、全身倦怠感が強くなったため来院された。
来院時、両ひざ、両足、両ひじ、両手関節および指関節に腫れと痛みがあり、手と足は浮腫様にむくんでいた。尿・血液検査では貧血、尿たんぱく陽性、
血清アルブミン低下が判明。レントゲンで胃潰瘍が見つかった。
多発性の関節痛で、左右対称に起こること、朝起床時の1時間以上続く関節のこわばりがあることなどから関節リウマチと診断された。いわゆるリウマチである。
よく見られる病気で、日本では0.3〜0.8パーセントの人が患っている。発症しやすい30〜50代では10対1で女性に多い。高齢では男性の比率が増加するとされる。
リウマチは関節局所の炎症性の病気と思われがちだが、じつは全身的な障害を伴う消耗性疾患だ。Kさんも貧血、微熱、倦怠感、浮腫、たんぱく尿、
胃潰瘍などの全身症状がある。病因は不明だが、免疫の異常と遺伝、環境要因が複雑に関係していると推測されている。
Kさんの場合は、初めての発症であり、レントゲンによる診断で関節の破壊像も見当たらなかった。こうした早期リウマチは治療が比較的効果をあげることが多い。
Kさんも短期のごく少量のステロイド剤で全身状態を改善、免疫抑制剤の少量療法で関節病変の悪化を阻止、退院後は元気に仕事をしている。
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