Tさんは建設会社勤務の24歳の独身サラリーマン。
会社の健診で糖尿病を指摘された。仕事が多忙なため食事は不規則で、1年間で体重が66キロから73キロに増えていた。炎天下での仕事が続き、
1日にコーヒー飲料の小缶10本と350ミリリツトル入りのソーダ類を2〜3本程度飲むのが習慣。9月になり、多飲、多尿と倦怠感、体重減少が起きた。
それでも、食欲は旺盛で、ごはんはどんぶりに2〜3杯、おかずも2〜3人前、食事回数は4〜5回と不規則なままだった。12月末に急に意識が朦朧状態となり、即日入院となった。
ケトン血症を伴う糖尿病の急性増悪(症状が悪くなる)で、病歴から清涼飲料水や食事からの多量のカロリー摂取による「清涼飲料水ケトージス」
あるいは「ペットボトル症候群」と判断した。ケトージスとは、インスリン不足に陥るときに血中に脂肪酸代識物であるケトン体が生ずる糖尿病の増悪状態をいい、
長期に続くと重症の意識障害となり生命も脅かす。
ただちにインスリンによる集中的な治療が施され、危険な状態は脱したが、問題はTさんの日常生活。家庭内の不和が一因で9歳ころから過食のため肥満となり、
現在も1人暮らしの不規則な生活だ。
この症候群は若年男性に多く、とくに糖尿病の新規発症時に見られる。通常1日に清涼飲料水の2.2リットル(約900カロリー)くらいの多飲で、1〜3ヵ月で発症する。
9月と12月に多い。内因性のインスリンが保たれているのに糖質の過剰摂取によって隠されていた糖尿病が急激に悪化するので、食事療法が功を奏する。
独身の若い人たちには、1日に清涼飲料水を1.5リットルボトルで3〜4本飲む人もいる。Tさんも「まさか飲み物くらいで」と信じられないでいたが、
今ではこれに懲りて食生活を改善、それまで以上の仕事をこなせる元気を取り戻した。
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