考えられる原因 ◆ 糖尿病による神経障害、膀胱障害 |
Sさんは56歳の雑誌社の編集長。夜遅くまでタバコをふかしながら超多忙な日々を送っている。
42歳ごろに口渇感が強く飲み物を多飲するようになり、イライラとトイレ回数が増えた。糖尿病である母親が似た症状を訴えていたので気がかりだったが、
やはり医者に糖尿病と診断された。薬の服用を指示されたが多忙にかまけてあまり通院できなかった。
53歳になり視カの低下を自覚し、年末には足の裏に紙を張ったようなしびれを感じた。55歳のときには、右足拇指から第三趾にかけて痛みと黒変に気づいたため皮膚科を受診。
内科を紹介され、即入院を宣告される。
多忙なSさんはいきなりの入院に不満をもっていたが、空腹時血糖が370ミリグラムあり、足の指の壊疽が悪化し、さらに悪いことにたんぱく尿もあって腎臓が悪いのではないか
といわれてちょっとびっくり。インスリン治療を行い、血糖はしだいに落ち着き退院も間近になっていたが、急に、体重増加と下肢のむくみ、発熱が起こり退院は延期となった。
発熱の原因は尿路感染症だとわかったが、よく調べると両方の腎臓が大きく腫れ、膀胱までの尿管が著しく拡張していた。繰り返す膀胱炎と糖尿病性神経障害による
無力性膀胱であった。尿が十分に排出できずに膀胱が風船玉のようにパンパンに腫れ、腎臓まで尿がたまり腫れ上がったのである。
糖尿病での膀胱の機能障害はそれほど珍しいことではなく、糖尿病の腎臓障害の折には約半数、網膜症や神経障害のある人でも三分の一の人が悩まされている。
よくある症状は尿が出なくなる尿閉や排尿困難、尿意の消失、尿路感染などである。意外とこのような排尿障害が病気を必要以上に悪くすることがあり、厄介なものである。
幸いSさんの病状は改善したが、さすがのSさんも今度ばかりはもう少し健康のことを考えなければと反省しきりであった。
|
厚生労働省の糖尿病実態調査で、日本の成人の6人に1人は、糖尿病の疑いがあるか、「あと一歩で糖尿病」という予備軍であると
推計されている。血糖値は少しくらい高くても、なかなか自覚症状は出ない。他人事と思わず、早期対策が第一、まずは検査が必要だ。
|