考えられる原因 ◆ 頸髄・迷走神経の疾患/心因性の病気 |
先輩の先生から突然、電話がかかってきた。「しゃっくりが止まらない患者さんがいるのだが、どうすればよいのか」という質問である。
しゃっくりはごくありふれた症状なので、一般にはあまり心配ない。しかし、長時問続く場合や、問欠的に思い出したようにしゃっくりを繰り返す場合などは、
かなり不快と苦痛がある。
しゃっくりは声門閉鎖を伴う横隔膜のけいれん性収縮で、急激に吸い込んだ空気が息を吐くときに閉まっている声門を無理に通過するため、
独特の「ヒツク」というような奇声を発することになる。生理的反応で異常ではなく、一時的に起きるものだが、いつ起こるか予測できないのが厄介なところだ。
横隔膜は胸と腹を分けている筋肉性の膜。われわれはこの膜の運動で呼吸している。横隔膜は首の頸髄の神経を介して脳の下方の延髄にある呼吸中枢の支配を受けている。
これらの神経経路の一部で刺激が与えられるとしゃっくりが起こる。左右の横隔膜は別々に運動しており、通常、片方だけのけいれんで起こる。両側で同時に生じることはまれである。
しゃっくりの止め方としては、30秒ないし1分問息を止め、息をこらえている間におなかに力を入れるのが効果的な方法である。両側の眼球を指で圧迫するというのもあるが、
あまり強く押さえると網膜剥離を起こすこともあるので注意がいる。空気や冷水を一息で飲み下したり、冷水で顔面や外耳、まぶたを冷やしたりする。
人に背中や手のひらを唐突にたたいてもらう方法もある。
診察室でなら舌の付け根部分を圧迫したり、綿棒でのどちんこを刺激したりする。鼻から冷たい食塩水を注入したり、胃チューブを入れて胃の内容物を吸引するなどの方法もある。
こうした方法が医学の教科書に載っているということは、がんこなしゃっくりに困っている人がけっこういる証拠でもある。
こうした方法で止められず薬で対処しなければならないこともある。心因性の場合や隠れた炎症など重い病気が見つかることがあり、しゃっくりといえども病気のことがある。
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軽症ならほかの人に迷惑がかからないかと恐縮するくらいですむが、長引けば呼吸の苦痛を伴い、無性に心配になる。10分以上続くしゃっくりは、一度主治医とご相談を!
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