『天気と気分の関係』

 よく「今日は天気がいいから気分が爽快だ。洗濯でもしよう!」とか「雨が降って天気が悪いから気分が憂麓だ」などと思うときはありませんか?これは、天候が気分に影響を及ぼしているのです。天気が晴れの時には気圧配置としては高気圧が張り出しています。
 一方、天気が悪いときには、低気圧が来ています。気圧は、脳内のバロレセプター(圧受容器)を刺激します。高気圧が脳内を刺激すると、目律神経のうち、交感神経を刺激し、身体全体が活性化します。当然気分が爽快になり、活動的で元気になります。低気圧が脳内を刺激すると、副交感神経が刺激され、身体はリラックスする方向に向かいます。
 気分はゆったりとし、身体の活動は緩慢になります。これらの反応は、古代の祖先が生き長らえて、適応するためには、重要な働きなのです。高気圧が近づいてきているときには、天気がよくなり明るくなるため、活動的になって餌などをとったり、外的からの攻撃をかわすのには都合がよいのです。しかし、低気圧が近づいているときには、天候が崩れて雨などが降る確率が高いのです。
 このようなとき雨にずぶぬれになりながら、活動していくと急激に体が消耗してしまい、生命の重大な危機に見舞われてしまいます。サルなどを研究している先生方のお話によると、サルたちは、雨や雪が降っているときには、木の葉っぱのしたでお互い身を寄せ合って静かにしている行動が見られるそうです。現代人でも登山などで急に大雨に遭い、ずぶぬれになり、さらに道に迷って歩き回る。そして夜になり温度が急に低下し、身体が動かなくなり、ついには死んでしまう、などの事故をよく聞いたことがあると思います。
 このように気圧が下がってきたときには、副交感神経が働いて、ジッとしていることが生命に対して大切なのです。ちなみに、雨の日に副交感神経が刺激され、リラックス方向になるのに、気分が憂樹彫になるのはなぜでしょう。身体はリラックスして動かないようになっているのに、我々の生活では、天侯に関係なく仕事をしなければなりません。天気が悪いので仕事を休みますなど言ったら周りに激怒されてしまいます。このような身体と生活の不一致が生じるため、仕事をやらなければなら芯いといや芯気分になるのです。
 ところが中には雨の日がとても好きな人がいます。人問は、経験の動物でありますので、例えば小さい頃、雨の日は必ずお母さんが傘をもって迎えに采てくれて、楽しく帰ったり、甘えられたりする経験(快経験)などがあると、からだのリラックス状態と相まって、雨の日がなんとなく好きになるのです。その他に、自分の細胞以外の細胞をやっつけてくれるnatural killer(NK)細胞も目律神経の交感神経と副交感神経の影響を受けます。何らかの刺激で交感神経が働くとNK細胞が低下し、副交感神経が働くとNK細胞は活発化するのです。
 身体が動かせない状態になったときに防御体制を高める動きだと考えられます。昔から「晴耕雨読(晴れたら耕して、雨が降ったら家の中で本を読む)」と申しますが、昔の人は、良くいったものです。でも、身体の機能から考えるなら、「晴耕雨読」ではなく「晴耕雨眠」、すなわち雨が降ったら寝ている方が自然なのかもしれません。(?)     

                                医仁会武田総合病院 臨床運動心理科 科長
                                                      石原 俊一

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