今改めて“食と健康”を考える −日本人の栄養は充足されているか− |
今、健康の保持・増進のためには、日々の食生活が重要であることが改めて見直されている。生き物の成長、健康保持には栄養がすべてであると言っても過言ではないが、 人々は本当にこの単純な事柄を理解しているであろうか。『生きるということは』と、改めて考える。月日を重ねる年令とは別に、常に夢と希望をもって、前向きに、 白立して生活すること、65歳からの出発・青春真只中、まさに『元気で長生き』、"Quality of life"が課題であろう。 他方、日本人の平均寿命(零歳の平均余命)はのび続けており、これをもって日本人の健康状態が評価されている。 日本国民栄養調査結果報告によると、日本人の平均栄養素摂取状況は総数の平均値でみると、カルシウムを除く栄養素(調査項目:エネルギー、たんぱく質、カルシウム、 鉄、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンC)は充足されているとされている。しかし、これらをよく見ると、種々の問題点を含んでおり、 特に、若年層の栄養摂取不足・アンバランスと健康障害が目立ちはじめている。 各種栄養素の所要量充足率(国民栄養調査)は、総年令層の平均でみると、男女ともカルシウムがやや摂取不足である以外は概ね充足されているとされている。 これを年齢層別にみると、男女とも、1〜6歳が最も充足率が高い。しかし、成長完成期として充分な栄養摂取が重要である15〜19歳あたりから急に摂取不足が目立つ。 男子ではカルシウムが、女子ではカルシウムと鉄が30〜20%摂取不足である。20〜29歳という学生から働きはじめた若者ではより栄養摂取状況が悪くなり、 男女とも各年齢層の内で最も悪い状態となっている。男子では飲酒も盛んになり、飲酒由来のエネルギー摂取も増加しているに関わらず、エネルギー摂取量も低下している。 勉学に、仕事に最も集中するべき年齢であるに関わらず、欠食・偏食と食生活の乱れが大きく、活力の低下、健康障害を招き、生活習慣病予備軍への道がスタートする。 女子でも、美容への高い関心から、ダイエット思考による栄養摂取不足がもたらされ、栄養摂取バランスを崩し栄養障害が出始めている。 中でも、ビタミンCや鉄、カルシウム摂取不足が顕著である。他方、ダイエット、食事制限を唱えながら、栄養源を薬剤や健康補助食品に求め、 更に栄養バランスを崩してゆく、白分自身のことのみではなく、妊娠、出産、育児と次代を担う子供たちを育まねばならない人生で最も大切なこの時期における健康状態に 大きな問題を投げかけている。 この栄養摂取不足は引き続き30〜39歳の年代に持越され、最も働き盛りの人々の健康を蝕み、更に生活習慣病への道が加速される。 糖尿病、心疾患など多くの成人病の危険因子はまず肥満と考えられているが、疫学調査結果では、元気で長生きの人々は標準体重より大きいことが指摘されている。 そして、私たちの調査では国民栄養調査にはない他の殆どの栄養素の摂取不足が浮き彫りにされている。 今、ダイエット思考と栄養補助食品、種々の栄養素が無造作に添加されている加工食品の氾濫の渦のなかで、 食生活に対する正しい指針を見失っている現状から抜け出すことが新しい年の最優先課題であろう。 タケダライフサイエンスリサーチセンター・疾病予防センター 木村美恵子 back |
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