関節リウマチの最近の治療動向

 平成14年4月23日に行なわれた日本リウマチ学会総会にて診断名が「慢性関節リウマチ」から「関節リウマチ」へと変更されました。 関節リウマチに関する知識はこの十年間に大きく進歩し、種々のサイトカインの関与が明らかとなり、滑膜や軟骨のアポトーシスが見つけられ、 関節破壊に関与するマトソックスメタロプロテアーゼの働きが明らかにされるなど、リウマチの病態に関する種々の知見が増えてきています。 しかし依然としてリウマチの病因は不明であり、決定的な治療は未だ見出されていません。
 高齢化社会となり、最近では高齢発症のリウマチ患者が増加しつつあり、リウマチの活動性が高いために急速に関節破壊が進行し、 多関節に及び治療に難渋する患者さんも増加してきています。関節リウマチは自己免疫異常をもととして朝の手指などのこわばり、手指の関節炎より始まり、 徐々に手首、肘、肩、膝、股などの大関節へと広がって全身の慢性の多関節炎を主症状とし、寛解と再燃を繰り返しながら、徐々に関節が破壊されて、 疼痛や変形のために日常生活動作の障害が進んでいくのが大きな特徴です。
 最近、関節リウマチの治療は格段に進歩してきています。まず薬物療法では抗炎症と鎮痛を目的として最初に用いられるのが非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)です。 近年はより副作用の少ないCOX-2選択的障害剤が開発されてきています。この薬剤は胃障害の副作用が少ないとされています。 次いでリウマチの免疫異常を是正することにより炎症を鎮静化し、寛解導入をはかる疾患修飾性抗リウマチ剤(DMARD)があります。 この薬剤はリウマチの進行を遅らせて機能障害を抑制する効果が期待されるため、早期から積極的に用いるべきとする考えが主流となりつつあります。 メトトレキサート(リウマトレックス)は欧米ではリウマチ治療の主流とされており、我国でも三年前にようやくリウマチヘの使用が認められるようになり、 ステロイド剤は強力な抗炎症作用があり、活動性の高い時期に用いると劇的な効果がある反面に副作用も多く、骨粗鬆症が強く現れ長期的にはQOLの低下につながります。 その適応は専門医の間でも意見の分かれるところであり、日常生活動作の障害が強い時期に少量を投与すべきである。
 また、限局した関節に強い腫脹や疾痛がある場合はステロイド剤やヒアルロン酸の関節内注射も効果を発揮します。 いずれにしても副作用に気をつけて各種薬剤の併用療法を的確に行っていくことです。定期的に血液・尿・X線・内視鏡などの検査を行い、副作用をチェックする必要があります。
 次いで手術療法はというと、リウマチの手術の目的はQOLの改善であり、主に関節の疾痛と機能障害を取り除いて日常生活動作の向上を目指すものである。 手術療法の時期は各手術法により異なります。滑膜切除術は関節の腫瘍、疾痛が強く、関節破壊が出現する前に行います。現在では関節鏡視下手術が主流となってきています。 人工関節置換術は関節破壊により日常生活動作が大きく障害された時期に行い、主に膝・股関節に行われます。種々のデザインの人工関節が開発されたことや手術手技の進歩により、 更に安定した成績が得られるようになりました。最近では二十年以上の耐久性があるといわれています。脊椎固定術は環軸関節亜脱臼により脊髄症状が出現すれば適応となります。 腱断裂が生じた時は可及的早期に腱修復術が必要となります。前足部の変形には関節切除形成術がおこなわれ、手指、手関節の関節形成術、固定術、人工関節なども行われ、 術後のリハビリテーションは必須であり、筋カ強化や関節可動域の改善訓練などを行います。リウマチの治療は薬物療法、手術療法、リハビリ療法を総合的に組み合わせて行い、 リウマチ患者の疫痛の暖和、関節機能の維持、関節外症状や合併症の対処、QOLの向上などを目指して杜会復帰できるように対処していくべきものです。
 最後にリウマチ患者のボランテイアの会である杜団法人目本リウマチ友の会は昭和35年に発足し、42年間にわたり活動を行っています。患者同士の親睦をはかり、 機関紙「流(ながれ)」を発行し、リウマチの患者教育や勉強会などに精力的に取り組んでいます。近い将来にリウマチ制圧の日が訪れることを皆様と共に切に願っております。

                               宇治武田病院 副院長 整形外科・リウマチ科
                                                 小田良之輔

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