健康とライフスタイル

 今、輝かしく飛躍するべき、新しい21世紀を迎えようとしています。しかし、日本は、いや、世界中、まさに、世紀末という言葉に当てはまる現実があります。20世紀は激動のときを過ごしました。度重なる戦争と敗戦、飛躍的経済の発展バプル崩壊、自然環境破壊などなど。でも、すべて、そこに生活する人問が自らの手で行った歴史的事実であります。そして、今、体カがおち、助けを必要とする高齢者と若年人口の減少、その中で、智カに偏り、自己中心的なまたは無気力で忍耐力の足りない若者が増加しています。
 本来、社会における人問の構成は、自然形として、年少者が多く、高く齢になるにつれ減少する、ピラミッド型でなければなりません。しかし、今、子供の少ない、高齢化の瓢箪型に陥り、社会構造の破綻をもたらしています。ヒトの「からだ」はひとつひとつの細胞から構成されています。社会がひとりひとりの人間から構成されているのと同じように。その個々の構成因子である人問、細胞が健全であることが、健康な社会、健康なからだを作る総てであることは言うまでもありません。
 「健康」とは、①からだに悪いところがなく、すこやかなこと、②人間のもっている身体的、精神的および社会的能カを、十分発揮できるような心身ともに健やかな状態、と、辞書には、記されています。身体を構成する1つ1つの細胞は、栄養素の補給により養われ、活性化されています。多量要求されるタンパク質、糖質、脂質(三大栄養素)、微量でからだの働きをコントロ-ルするビタミンとミネラル(微量栄養素)があり、これらの絶妙なバランス、生体におけるスムーズな代謝回転が我々の健康を守っています。これまでの多くの研究で、三大栄養素については、栄養失調、過剰摂取、摂取アンバランスなど、生活習慣病や種々の疾患に関する多くの知見と問題が明らかにされてきています。また、ビタミンでは、白米を主食とする日本人の国民病といわれたビタミン引欠乏症(脚気、心臓障害)、夜盲症をもたらすビタミンA欠乏症等々、多くが明らかにされ、食生活改善や薬により、予防、治療が可能となってきています。
 日本人の死亡原因をみると、第二次世界大戦以前は、感染症、特に低栄養が重なって、結核などによるものが主でしたが、抗生物質など新しい薬の発見と栄養改善により、細菌由来のこれらの疾病が激減しました。がん、脳血管疾患、心疾患など、長い間の栄養を中心とした生活の歪がもたらす生活習慣病がその主流となりました。中でも、白米ご飯と塩分の多い味噌汁、漬物に代表される日本古来の食パターンが、脳血管疾患を日本人の第一死因の原因として浮上させましたが、高タンパク・低塩食の啓蒙・普及により、激減しました。これと相反して、食生活の欧米化が進み、虚血性心疾患による死亡が急上昇しました。これらの疾患の原疾患である糖尿病、高脂血症、高血圧をもつ患者も増加していますが、これらは栄養管理により予防、治療が可能であることが明らかにされてきています。
 これら多くの疾患が減少し、長寿社会を迎えて、がんによる死亡が増加しています。多くの疾病予防が可能となり、免疫能が低下し、がんが発病するまで、生きられるようになった、ともいえます。これに加えて、ストレス負荷による心身障害や骨粗羅症、老人性痴呆症、肥満などが高年齢層における健康問題として注目を集めています。他方、次世代を担う子供を含む若年層の健康問題が、噴き出してきています。第二次世界大戦以降、上昇し続けている中学生の体格が、昨年初めて下降方向を示し、世問を騒がすような問題行動、そして、若者の「生活感」離れ、即ち、飽食のなかにあってグルメを賞賛しながら、食への関心が薄れ、インスタント食品、コンビニ弁当に明け暮れ、高い夢を唱えながら、仕事への興味、熱意を失い、漫然とした生活を送り、痩せや肥満、不妊や育児拒否など、多くの問題としても見え隠れしていま頁日本人の少子化が社会問題となっていることも周知のことであります。
 ひとは他の動物と同様、自然の中に生きる生き物の一種なのです。自然の摂理に逆らって、健全に生きて行ける筈はありません。このように、時代・社会的背景により、疾病の構造が変わってきます。今、取り残され、または、新たにみえてきている健康問題がありますが、この多くは、栄養を中心とした生活習慣の改善により予防、治療可能なものであります。長い問不治の病とされてきた「がん」も栄養強化による免疫能の活性化などにより予防できることが明らかにされてきています。もし、これらの病気の遺伝子をもっていても、その発症を予防・遅延することができるようにもなってきています。また、最後に21世紀への課題として残るであろう「ストレス」由来の障害も栄養状態によりコント□-ルできることが解ってきました。わが国の医療制度が変わり、医療費が個人の大きな負担となって参りました。我々は、病気になる前に、目分で自分の健康を守り、心身ともに元気で生き生きとした日々を送ることができるよう勤めねばなりません。いま、生活・自然環境の変化が激しい流れのなかで、「介護の要齢者」と「夢と希望に輝く活カある若者」の21世紀を目指して、日々の生活習慣、食生活を見直し、病気になりにくい身体づくりを目指しましよう。

                                  タケダライフサイエンスリサーチセンター所長
                                                     木村 美恵子

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