定期健康診断の内容と実態

 我が国の労働者数は現在5,000万人に達しています。これら就労者の健康を守るため、労働安全衛生規則が設けられ、その第44条には定期健康診断の検査項目が規定されています。定期健康診断の内容と実態についてご紹介しましょう。
●一般定期健康診断
 一般労働者は年一回の定期健康診断を受けるよう事業者から指示されます。検査内容は比較的簡単なもので、身長・体重・視力・聴力・尿検査・血圧測定・胸部X線検査・血液生化学検査・心電図検査と内科診察です。(但し、年齢によっては医師の判断で省略できる項目もあります。)血液生化学検査の内容は貧血、肝機能、血中脂質及び、血糖をチェックするものです。
 最近の調査によると受診者1155万人の有所見率は39.5%に上っていす。また、項目別の内訳をみると、脂質異常が22.0%と最も多く、ついで肝機能異常は13.1%となっています。高脂血症が最も多いのは、日常の過食暴飲と運動不足によるもので、いわゆる生活習慣病を反映しています。これは、やがて動脈硬化を進展させ、脳卒中や心筋梗塞を誘発する危険因子とされていますので、是非是正していただきたいものです。現在、薬物治療が大変有効有益となり、広く用いられています。
 その次に多いのは肝機能異常ですが、その内容をみるとγ−GTP高値というのが最も多いように見受けられます。この因子はもと胆道系酵素と呼ばれ胆石症や胆のう炎、或いは薬剤性肝障害の時に異常高値となります。処でアルコールも薬物の仲間ですから飲みすぎはもろにγ-GTP高値に反映してしまうと言うわけです。この他、γ-GTPは脂肪肝でも高値となります。以上の事から、γ-GTPもまた生活習慣病を反映する因子といえましょう。
●診断結果の活用
 定期健康診断の結果、異常が指摘されたら速やかに是正していただきたいと思います。毎年の健診で同じ異常が放置されつづけているケースは驚くほど多いのです。 これではせっかくの健診努力が無駄になるばかりか、受診者の危険が増大することになります。

                                      康生会武田病院健診センター 所長
                                                      須山 哲次

                                                                       back
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