「五 月 の 病 気」 |
病気の原因や誘因にストレスの関与が大きい病気はあります。例えば、胃、十二指腸潰瘍、過敏性大腸炎、高血圧症、筋緊張性頭痛、円形脱毛症、書痙、痙性斜頸、メニエール症候群、頸肩腕症候群、神経性嘔吐、神経性食思不振症、過喚起症候群、不眠症、インポテンス、神経症的抑うつ状態、などの多くの病気があげられます。 ストレスは病気の発症・憎悪に多少なりとも関与するといっても過言ではありません。現代社会では、色々なものが便利になった反面、職場あるいは家庭内でのストレスが個人に重くのしかかり、身体的ストレスと精神的ストレスが複雑に絡み合っております。いずれにしても、ストレス解消には十分な休養が必要です。適量の飲酒・スポーツや趣味をもつことも良いでしょう。 さて、5月は一年の中でも特にストレスに関係する病気が起こりやすいようです。理由は不明ですが、「日差しがキラキラまぶしく感じるとき、精神的に不安になりやすい傾向がある。」と言われております。身体面では、五月は血圧が変動して高くなりがちです。入学や入社の研修もおわり緊張がほぐれる頃、いわゆる「五月病」が起こります。入学後、或いは一般社会人になった時、自分が想像していた環境とは異なるため、新しい環境に心がついていけずに起こる病気です。四月から続いた精神的緊張状態が、5月の連休によって弛緩し、再び新しい環境に適応する自信を喪失することが原因のようです。 更年期を迎えた女性は、閉経期ホルモン代謝の変化が、精神を非常に不安定にさせます。最近では、まじめで融通のきかない中年男性にも精神的に不安定な現象が見られ、男性の更年期と呼ばれます。更に、このタイプの男性が定年を迎える頃にも精神的に不安定な症状が現れます。新しい環境に適応する自信喪失が原因と考えられ、やはり五月に起こりやすいと言えます。心療内科への受診やカウンセリングなどが必要でしょう。神経内科の領域でも、めまい・頭痛・しびれなど、ストレスの関与が大きい病気は、五月に多いようです。 ストレスが関与するめまいは末梢性であり、生命的危険性はあまりありません。しかし、稀に脳梗塞などが原因で起きる中枢性のめまいもあり、ふらつき、物が二重に見えるなどの症状が合併しています。また、ストレスが関与する頭痛は、肩こり、後頸部の筋肉の緊張などが多く、絡み合っておきる緊張性頭痛が圧倒的です。しかし、くも膜下出血や脳梗塞が原因の頭痛に注意する必要があり、この場合は、鎮痛剤の効かない激しい頭痛で、意識障害や麻痺などがみられることもあります。最近では、CTスキャンやMRIといった検査で脳や、脊髄の状態が非侵襲的(痛い検査ではない)に手に取るようにわかるようになってきております。神経学的診察を踏まえた上で、これらの検査結果を評価しないといけませんので、頭痛、しびれが気になる場合は是非、一度、神経内科の受診をお勧めします。 医仁会武田総合病院 神経内科 部長 神田 益太郎 医長 里井 斉 back |
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