私たちは長年にわたり、予防医学的観点から、栄養と健康・疾病に関する
研究を行い、
その成果のデータベース化や栄養診断システムの開発も行って参りました。
一方、近年、健康ブームにより食事と健康、あるいは疾病予防に対する関心が過去に例を見ないまでに高まっております。
その中で、健康・栄養に関する種々の情報が氾濫、中には必ずしも正しくない知識や理解も存在すると考えられます。
こうした状況を踏まえ、これまで培われてきた種々の知見を、より正確に、より分かりやすくインターネットを通じて広く
提供することにより、人々の健康の維持・増進にお役に立てればと考え、京都大学、KDDI研究所、健康・栄養研究所、
通信総合研究所、沖縄県立看護大学、通信放送機構などの共同研究・試みとして、本健康・栄養インフォメーションのホームページ
を立ち上げることといたしました。
とても不充分なものですが、皆様方のご参加、ご協力、ご指導のもとで、少しづつ内容の充実を図りたいと考えております。
よろしくお願い申し上げます。
食べるということは、人間の基本的営みで、文化の中の文化と言われたりしていま
す。たしかに、衣食足りると「食べ方」、作法と言ったほうがいいかもしれません
が、に凝る人たちが国や時代を超えて出現しています。現代日本もまたそのような時代だと思います。ただし、往々にして美食や
外面・体裁的側面にとらわれすぎて、食べる本質である健康の維持からは、逸脱しがちです。箸やフォークでなく、手で肉をつかんで
食べようが、スープ皿に口を直接付けて食べようが、食物摂取的観点からは実はどうでもいいことです。逆に、日々の生活では忙しさ
のあまり、食事を定期的にとれなかったり、ひどいときは抜いてしまったり、あるいは仕事しながらの、ながら食べになったりします。
食事そのものにとんちゃくしない人が出ているのも時代を反映しているのではないでしょうか?
私なども後者の一人で、研究所のある上福岡という埼玉県の中ほどにある市から1時間ほど電車に乗って
、午後都心の本社で開かれる会合に出ることが多いのですが、ついついコンビニで買ったサンドイッチやおにぎりを
車中で食べてしまうのが実情です。あまり褒められた行動ではありません。実際最近は多重がオーバー気味で健康検査のたびに
お医者さんからダイエットを求められています。木村先生に健康栄養サーバを作ろうと言われたとき、まさに私のためにある
ようなシステムだと思い賛成いたしました。ただし、この種のプロジェクトは、言うは易く実施ははなはだ困難なことが多いです。
特に多方面に渡る人たちの合作プロジェクトでしたので、木村先生のプロジェクト運営の大変さは推察するに余りあります。
今回の完成は、その意味で喜ばしいことで、日本におけるこの種の活動のいっそうの活性化に寄与できればと思います。
一個人としては、このサーバのユーザとして健康管理に使っていこうと思います。
これを執筆しているのは8月8日、戦後も60年近くが経過し、大半の日本人には意識外になってしまった戦争というもの
を我々が少しだけ意識する時節ではないでしょうか。私事になりますが、私の父は第2次世界大戦に徴兵されてビルマ方面で
戦っていたようです。ご承知のとおり、旧日本軍ほど食糧補給・栄養に問題があった組織も珍しく、日露戦争では脚気に悩まされ、
また先の大戦に従軍した兵隊にとって最大の脅威は飢餓と病で、大部分はこれで亡くなりました。旧軍は「名誉の戦死」という言葉を
多用しましたが、敵の銃弾に倒れることを「名誉」と言うなら、この名誉を得た兵隊は実は少数派でした。
そういうわけで、父の食事への考え方は、「とにかく出された食事は全て食べろ」というもので、子供の頃、食事を残すと
怒鳴られたり、機嫌の悪いときはゲンコツが飛んできたものです。こういうとかなり野蛮な親父のイメージですが、
普段は非常に理性的人物でした。たしかに、餓死していった兵隊を目の当たりにしていたわけですから、食事を残して
捨ててしまうなどということは、旧軍隊の将校にとっては犯罪行為に感じられたと思います。彼も多くの戦友たちと共に鬼界に
入ってだいぶ経ち、飢餓体験を持つ日本人は非常に少なくなっています。飽食の現代、食べ物も簡単に買えますから、
出された食事を全て食べる式では体重は何キロになるか分かりません。食事のコントロールが必要なわけです。
ただし忘れてならないのは、今でも、全世界的に見れば飢餓と隣り合わせた人たちのほうが飽食した人たちより多いことです。
健康栄養管理はたしかに大変めんどうな作業ですが、大変で止めたい気持ちになったときは、私たちが無駄な食事をしなくなれば
世界の食料バランスの適正化に貢献できるのだとか考えて、がんばりたいものです。
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タケダライフサイエンス・リサーチセンター(疾病予防センター)所長
木村 美恵子
株式会社KDDI研究所 代表取締役所長
浅見 徹